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アイ・ペットクリニックの西井先生が作る物語から愛犬・愛猫の病気のサインをレクチャーする企画です。

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01 肺水腫

Vol.01

sick signatures

1、【心臓病の先にある肺水腫という病気】

ある朝、急にうちの猫の様子がおかしくなった。いつもならご飯の時間に「にゃぁーーーん(ご はんくれー)」と呼びにくるのに来ない。それだけじゃない、じっと丸まっていつもなら走ったあ とにしかしない「ハァハァ」と口を開けながらの呼吸をしているし、赤い血のようなものを今し がたもどした。これはただ事じゃないと思い、動物病院に連れていくことにした。 「西井先生、うちのこ今朝から急に呼吸がしんどそうなんです。赤いのも吐いていました。」「いつ も元気なりおちゃんが、珍しいですね。りおちゃん、どうしたん?」と先生が身体検査を始める と、いつもは大人しいのに、痛そうに暴れるりお。すると先生が「状態が悪いですね。肺の音が 悪いので、レントゲン撮ってきてもいいですか?」と言われたので、検査をお願いすることに。


ー先生サイドー

よし、レントゲン撮ろうか。「心筋症」の可能性あるから酸素室と留置(血管を確保し、点滴や薬 剤を入れるための管を設置すること)の準備しといてくれる?あと、挿管(人工呼吸が必要な場 合に気道を確保すること)できるようにも!!と看護師に指示をだす。レントゲンを撮るときには、 横向きと仰向けで寝てもらい撮影をする。しかし横向きにすると急に呼吸が荒くなりだした。こ れは状態が悪いな…すぐにでも呼吸状態の改善を試みないといけない。

レントゲン検査が終わり、すぐに画像をチェックする。「肺水腫」だ。すぐさま、利尿剤を注射し、 説明に向かう。 「りおちゃんですが、肺水腫になっています。肺水腫は心臓が血液をうまく循環できなくなり血 液の交通渋滞が生じ、その結果、肺に血液成分が流れ込んでしまった状態です。イメージとして、 溺れている状態に近いです。このままほうっておくと呼吸困難で亡くなってしまいます。できるだ け早く肺水腫を治すために、利尿剤を注射しました。このあと、点滴をして治療をしていきます がよろしいですか?」「先生、この肺水腫になる原因はなんなんですか?昨日までは普通だったの に…」「一番多いのは、肥大型心筋症と呼ばれる病気です。どの年齢の猫ちゃんでも出てくる病気 で、症状がでるまでわからない場合もあります。」

猫ちゃんの心筋症、とりわけ肥大型心筋症と呼ばれるものは、発生率が 14.5~34%と言われてい ます。そして、そのほとんどが見てわかる症状がないのが問題です。ですから、今回のようにひ どい症状がでて初めて気づく場合がほとんどなのです。では、事前に調べる方法はないのか?今 のところ、「心雑音がないか」「心臓のエコー検査で異常がないか」「心筋バイオマーカーで異常が ないか」が早期発見につながるポイントになります。ですが、若い猫ちゃんでなにも症状がない のに、ここまで調べようと思うことは少ないと思います。

「そうなんですね…先生、りおのことよろしくお願いします!!」「わかりました。最善をつくしますね。」

幸いにも、りおちゃんは利尿剤と点滴により回復しました。その後は、定期的に検査を行い、肺 水腫の原因となった心筋症と付き合っています。

 

心筋症のサイン
・息切れしやすい
・じっとしているときに肩を使った呼吸をしている

※ほとんどが無症状なので、見つけるのは難しいですが心筋バイオマーカーと呼ばれる血液で心 筋症の可能性があるかが簡易的に判定できるキットもあるので発見率は上がっています。

ペットケアセンター アイ・ペットクリニック
< 眼科・腫瘍科・皮膚科・循環器科・CT>
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